特別展「あやしい絵展」
大阪歴史博物館
2021年7月3日(土)~8月15日(日)
前期:7月1日(木)~7月26日(月)
後期:7月28日(水)~8月15日(日)
ただいま、大阪歴史博物館にて特別展「あやしい絵展」を開催中です。
「あやしい」という言葉は「妖しい」「怪しい」「奇しい」と様々な漢字を当てはめることが出来ます。
共通するのは「キレイ」「心地よい」とは少し違う、神秘的で不可思議で奇妙な様子を表していることです。
本展は「美しい」だけに収まらない表現の系譜を約150点の「あやしい絵」を通して、時代背景と共に読み解きます。
本展の会場の様子の一部をご紹介します。
会場に入ってすぐ迎えてくれるのは安本亀八「白瀧姫」。
この作品は「生人形」と呼ばれるもので、幕末から明治にかけて人気を博したまるで生きているかのようにリアルな人形です。
「白瀧姫」のそばには稲垣仲静の「猫」が並びます。
ほくそ笑むかのようなまさに”あやしい”表情を浮かべています。
実はこの猫、本展のガイド役もつとめます。
猫が作品の主題となった物語のあらすじや、都都逸を紹介してくれるので会場内の黒いパネルも要チェックです。
1章のプロローグでは江戸後期の絵画や、河鍋暁斎・月岡芳年の浮世絵など、幕末から明治にかけての激動の時代の作品が並びます。
第2章では明治中期から大正末ごろまでの作品を取り上げます。
明治中期には文学における人間性の開放・自由な感情の表現を求める浪漫主義運動が巻き起こりました。
浪漫主義運動を象徴する与謝野晶子「みだれ髪」や藤島武治が表紙を描いた「明星」なども並びます。
当時多くの日本人芸術家が刺激を受けたアール・ヌーヴォーやラファエル前派の作品もあわせて紹介。
「宿命の女」を意味する西洋のファム・ファタルの概念は日本の幻想文学やその挿絵にも多大な影響を与えました。
明治中ごろ以降、泉鏡花や谷崎潤一郎らによって幻想的な世界を描いた文学作品が生み出されます。
そうした小説には、西洋の美術のイメージや雰囲気を取り込んだ”あやしい”挿絵が添えられました。
本展では「安珍と清姫」や「高野聖」「人魚の嘆き」などさまざまな幻想文学の挿絵や、そこから独立した絵画などを多数展示しています。
上村松園や北野恒富、島成園、梶原緋沙子、秦テルヲ、甲斐庄楠音、岡本神草などただ表面的な美しさだけでない女性の姿を描いたさまざまな画家の作品も登場。
狂い舞う女性の姿を描いた上村松園「花がたみ」は7月26日までの前期展示作品です。
本展は展示替え作品も多いので、何度か足を運んでみるのもおすすめです。
エピローグとなる第3章では、大正末期から昭和にかけての雑誌の口絵や表紙絵、挿絵作品で締めくくられます。
美術の視点と歴史の視点。
二つの視点をあわせることでより匂い立つ「あやしい絵」の世界をお楽しみください。
本展はオリジナルグッズや関連グッズも充実しています。
お帰りの際はグッズコーナーへのお立ち寄りもお忘れなく。
特別展「あやしい絵展」 |
◆合わせてこちらも◆
「あやしい絵展」の出品協力館でもある京都国立近代美術館では、2021年度第2回コレクション展の中で「あやしげな絵」を特集しています。
甲斐庄楠音をはじめとした「あやしい絵展」で取り上げられた作家の作品とともに、また一風違ったあやしげな絵を紹介します。7月25日まで。
京都国立近代美術館 2021年度 第2回コレクション展 あやしげな絵 |
◆合わせてこちらも◆
「あやしい絵展」にも作品が出品されている上村松園ですが、ただいま京都市京セラ美術館では松園の全貌をご覧いただける展覧会を開催中。
最初期から絶筆に至るまでの代表的な作品100点余りが集結します。
8月15日までは「あやしい絵展」東京会場で登場した上村松園「焔」も展示されます。
京都市京セラ美術館開館1周年記念展「上村松園」 |