昨年9月にオープンしたtoripie KYOTO。
鴨川から少し東に入った静かなビルの一室で、日本各地の現代作家による工芸美術作品や手仕事による洋服などを展示・販売しています。
このたび、ここtoripieで京都初の個展を開くのが、漆芸作家の市川陽子さんです。
京都市立芸術大学出身の市川さんは在学中から漆に対して学んでも学んでも掴みきれない奥深さに惹かれており、長い歴史を持つその材料の可能性のひとつとして、主に漆皮(しっぴ)の制作に取り組まれています。
漆皮とは漆器の胎(たい・支持体のこと)に動物の皮革を使用したもので、その歴史は奈良時代までさかのぼると言われています。
歴史的な技法である一方、市川さんはその再現ではなく、現代を生きる作家として今手に入る素材と現代の価値観のもとで制作することに意味がある、と語ります。
その手から生み出される作品の暖かな肌感やその造形を通して、豊かな表情と想いが感じられます。
植物由来の漆と動物由来の皮。
特に動物の皮は食肉への加工工程で必ず生まれるもので、サスティナブルな素材としても見直されています。
ともに自然からいただくそれらの素材を組み合わせることは、ごく自然的な表現方法で、“くらし”を大切にされる市川さんだからこそ、よりシンプルに作品制作と向き合われた結果、そこに辿り着かれたのでしょう。
生み出された作品群は、いま立ち止まり、改めて我々のくらしを見直すきっかけを投げかけてくれます。
会場では、作品は実際に手の取ることができます。
その触感は想像より軽く、まさに皮そのもの。光の当たり方で漆特有の肌感と輝きが現れます。ぜひ現地で手に取ってお楽しみください。
開催中の本展は7月5日(日)まで。
※12時~18時半(最終日は17時まで)
※7月1日(水)、2日(木)は休廊
toripie KYOTOの詳細はこちらからご覧いただけます。
オンライン販売はこちらから。