写真と染のまじわるところ
Intersection of Photography and Dyeing arts
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が緊急事態宣言の対象を全国に広げました。
これを受けて、染・清流館は4月18日(土)より臨時休館いたします。
今後の予定につきましては、決定次第ホームページ、フェイスブック等でお知らせ致します。
ご来館を予定されていた皆様おかれましては、申し訳ありませんが、ご理解、ご協力の程お願い申し上げます。
4月10日(金)より開幕した、「写真と染のまじわるところ」を紹介します。
今回、染・清流館キュレーターの深萱様によるフライヤーに掲載されたコメントをぜひご覧ください。
「写真」と「染(染色)」は現代において、ともに美術的な表現行為の1ジャンルと認識されている。
それでは、ともに表現行為である「写真」と「染」が「まじわる」とは、どういうことか。
写真に軸足を置いて考えれば、染とのまじわりは撮影や現像よりも焼付において生じることがまず考えられよう。写真を焼き付ける支持体としては印画紙が主要な位置を長く占めてきた。シルクスクリーンやインクジェットの技術が発達し、紙とは異なる柔軟性に富んだ布へのプリントが容易になった今、写真の表現は新たな可能性の広がりを獲得したといえる。
一方、染に軸足を置いて考えるなら、写真とのまじわりは図案の制作段階に変革を及ぼしている。伝統的な染色は、動植物や風景などの写生を基に模様を考案し、作品の図案としてきた。前記のような技術の発達は、写真を作品の原図として活用する道を開いた。ただし染の作家が写真を活用する理由は過程の省略よりむしろ、世界をよりリアルに作品へ映し込む意図や、手描きの図案に残る人間臭さへの違和感にあるのかもしれない。彼らは写真に世界を感じて育ち、ミニマルアートや工業デザインのシャープな美に親しんできた世代でもある。
染の原図として写真を活用する実践は、アパレルの分野で日常的にみられるものの、美術としての染色においてはまだ多数の作家が取り組むところではない。今展は、歴史を刻み始めた「写真と染のまじわるところ」を主題に、染に軸足を置きつつ、作家5名が構想と制作の力を駆使して到達した作品を紹介する。
今展は毎年京都で開かれる国際写真祭KYOTOGRAPHIEのサテライトイベントKG+のオフィシャル展覧会として計画したが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いKG+の開催が延期となった。KG+の会期から外れた時期の開催となったのは残念だが、今展が染あるいは写真に関心を抱く多くの人たちの眼に触れてなにかを触発する契機になればと願っている。
(染・清流館キュレーター 深萱真穂)
写真2点はいずれも会場の様子
◆出 品 作 家◆
井上 康子 INOUE Yasuko
2012年 京都造形芸術大学大学院修士課程修了
「アートアワードトーキョ—丸の内 2012」後藤繁雄賞(行幸地下ギャラリー/東京)
2013年 KISS THE HEART #2(三越日本橋店/東京)
染・清流展(以降 ’15、’19出品)
2014年 Under 30 Selected(ギャルリ・オーブ/京都)清水穣賞
2015年 西会津国際芸術村レジデンス(西会津国際芸術村/福島)
2016年 PAT in KYOTO京都版画トリエンナーレ(京都市美術館)
2017年 WAFTINGⅡ(Medialia ギャラリー/ニューヨーク)
2018年 行為と現象Ⅰ(染・清流館/京都)
賀門 利誓 KAMON Toshichika
2011年 京都精華⼤学芸術学部素材表現学科テキスタイル専攻 卒業
2014年 TERRADA ART AWARD TERRADA賞受賞(T-ART HALL/東京)
2015年 個展(T-ART HALL/東京)
現代⼯芸の数奇 和美・茶美展(染・清流館/京都)
FACE 2015 損保ジャパン⽇本興亜美術賞展 ⼊選(損保ジャパン⽇本興亜美術館/東京)同16
琳派400年記念 新鋭選抜展(京都⽂化博物館)
2016年 藝⽂京展 2016「現代の平⾯」京都市⻑賞受賞(京都芸術センター)
未来展 準グランプリ受賞(⽇動画廊/東京)
2017年 現代⼯芸の数奇(染・清流館/ 京都)
Young Art Taipei 2017(SheratonGrande Taipei/台湾)同16'
2018年 ART FAIR TOKYO 2018(東京国際フォーラム/東京)
2019年 ONE ART TAIPEI (The Sherwood Taipei/ 台湾)その他、TAIWAN
現 在 ⽂化施設にて企画運営ディレクター
むらた ちひろ MURATA Chihiro
2011年 京都市立芸術大学大学院美術研究科工芸専攻修士課程修了
2013年 染・清流展(以降 ’15、’17、出品 染・清流館/京都)
2016年 「未来の途中のリズム」(京都工芸繊維大学美術工芸資料館)
2017年 「未来の途中の、途中の部分」(Gallery @KCUA/京都)
個展「Internal works/水面にしみる舟底」(ギャラリー揺/京都)
2018年 個展「Internal works/境界の渉り」(Gallery PARC/京都)
個展「Internal works/満ちひきは絶え間なく」(恵風ギャラリー/京都)
PHO-TEX展(ギャラリーギャラリー/京都)
室田 泉 MUROTA Izumi
2014年 Textile Exhibition The Tricycle(染・清流館/京都)
個展「a pair up」(ギャラリーギャラリー/京都)
2015年 Contemporary NOREN展(京都芸術センター)
2017年 第21回染・清流展ビエンナーレ2017(染・清流館/京都)
個展「Jump so Blue」(ギャラリーマロニエ/京都)
2018年 DISEL LIVING INSTALLATIONTHE WALL by GENET(DISEL/東京)
PHO-TEX展(ギャラリーギャラリー/京都)
2019年 個展(ギャラリーマロニエ/京都)
現 在 大阪成蹊大学芸術学部准教授
八幡 はるみ YAHATA Harumi
1982年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
1997年 京都芸術新人賞 受賞
2007年 〈素材×技術〉からフォルムへ(茨城県つくば美術館)
2008年 個展「GARDEN」(髙島屋日本橋店画廊X/東京)
2013年 現代の日本工芸展(文化庁・外務省主催、森上博物館、アメリカ)
個展「八幡はるみ工芸・東洋館を祝う」(大原美術館工芸館・東洋館)
2016年 革新の工芸−“伝統と前衛”、そして現代(東京国立近代美術館)
2019年 京都美術文化賞 受賞
現 在 京都造形芸術大学教授
写真と染のまじわるところ ★染・清流館とは |