林 康夫 陶展 ― 五条坂より
戦後の前衛陶芸の草分けとして活躍し、91歳の今もなお、その衰えることのない創作力で活躍中の林康夫氏の個展が京都陶磁器会館で開催中です。
今回、同館学芸員より、本展を紹介いただきます。
会場風景 撮影者:来田猛
この度、京都陶磁器会館では、特別企画展「林 康夫 陶展 ~五条坂より~」を開催いたします。
林康夫氏は、1928年(昭和3年)京焼の窯元、林沐雨のもとに生まれました。
少年期の林氏は、日本画家を志し京都市立美術工芸学校・絵画科に入学します。折しも太平洋戦争が勃発し、林氏は15歳で海軍に入隊、17歳の春からは特攻の訓練を受けます。その時の夜間飛行訓練は、後の錯視空間的立体作品の発想につながったそうです。出撃の日が迫りつつあるなか、終戦を迎えます。
復員後は、京都市立美術専門学校に編入学しますが、戦中戦後の混乱から物理的にも精神的にも、絵に向き合うことが難しくなり中退、父・沐雨の陶業再開に合わせて、五条坂の工房にて18歳で作陶を開始します。そして、日本画を離れてもなお、美術に強い憧れのあった林氏は、前衛陶芸団体「四耕会」の立ち上げに参加し、家業の傍ら、美術の勉強やオブジェの制作に励みました。「雲」(1948年)は日本国内で最初の陶オブジェとされています。林氏の作陶活動と日本の前衛陶芸は、まさに、ここ五条坂より始まりました。
本展では、1950年から今年の最新作まで、およそ70年にわたる作品を一堂に展覧いたします。また、13歳の「林少年」描いた「柿の絵」が初公開されます。
本展のお願いに伺ったときに林氏は「90歳は80代の最後、91歳のこの展覧会が90代初めての個展だ。」と語って下さいました。優しい眼差しの奥に輝く、厳しい熱意は、私たち後進を奮い立たせます。
最後になりますが、弊館においてこのような展覧会実現の為、情熱をもってご尽力賜りました林康夫氏、関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
(京都陶磁器会館 学芸員 下村一真)
9月28日(土)に開催された林康夫氏による講演会も定員を大きく上回る応募となり、大盛況でした。
講演会の様子
〇林 康夫 陶展 ― 五条坂より |
●京都陶磁器会館
写真=畠山崇
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