象をひらく
下村 一真 蛭田 美保子 畠中 沙綾 満原 利奈
現在、ポルタギャラリー華で開催されている、2017年に京都市立芸術大学大学院を修了した油画・日本画・陶芸の若手作家4名による展覧会「象をひらく」の会場を訪問。
“ 各々が思っている作品にしたいことは自分にしか見えていない。そんな「見えていないもの」を皆さんに「見える」ようにするのが私たちのすべきこと。 ”
そのように発言された油画の蛭田美保子氏が発起人となり、目に見えない魅力を自分なりに解釈して表現することに関して、思いを同じとする4人が集まり、三浦アートギャラリーの企画によって実現した今回のグループ展。
京都でこれから頑張ろうという同時代の若手作家たちで未来に道を「ひらく」という思いもタイトルに込められています。
今回、4人の出品作家の皆さんにお話をうかがうことができました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蛭田 美保子 氏(油画)
ことしるべ:空想画のような世界ですね。
蛭田:実はこれは空想画ではないのです。実際に食材を買ってきて、自分なりの解釈やルールに基づいて調理した「料理」で、それを観察してまず水彩でスケッチし、さらに油彩に仕上げています。
私は食べることを目的としなかった場合の食べ物にどのような可能性があるのか、をテーマに作品を作っています。
「第1の料理」がいわゆる「食べるために作られたもの」ならば、"料理" の定義は変えず解釈だけを変え、美のルールに従い新たに作り直した結果出来上がった造形物の事を「第2の料理」と呼ぶことにしました。
作品を通して、食品の扱い方について新しい提案をしていくと同時に、私たちが普段食べ物に対して持っているイメージや固定観念を打ち砕き、見ているようで見ていない食品の現実の姿を描いていけたらいいな、と思っています。
ことしるべ: 食べることを前提にしていない「第2の料理」ですが、実際に食べられたことはありますか?
蛭田: あります。スケッチが終わった時点で腐っていないものは。(笑)
畠中 沙綾 氏(陶芸)
ことしるべ:絵画作品と同じ会場というのは意識されますか?
畠中:このようなグループ展は過去にも出展したことがあります。
バランスを意識することはありますね。平面と立体で、表現は違いますが、モチーフのどこに魅力を感じるのかで刺激をもらうことがあります。
ことしるべ:モチーフといえば、「動物」がやはりそれにあたりますか?
畠中:はい。動植物をモチーフに作品を作っています。
私が表現したい「人間臭い」表情をしている動物の顔や、そのほか私が魅力を感じる動植物の造形美や象徴的意味合いが観る方の心を高揚させるキッカケになればいいな、と思っています。
そして自分のモチベーションをあげ、心が躍り感情をプラスにするような、そんな作品を作り出していきたいといつも考えていて、展示している作品にもその要素を集めて詰め込んだものになっています。
ぜひ楽しんでください。
満原 利奈 氏(日本画)
ことしるべ:畠中さんの作品と違い、人物が描かれた作品が並んでいますね。
満原:はい、私は人物をモチーフに《共感》というテーマで制作をしています。
自分自身が体感した、幸せ、苦悩、気づき、それらが観る人の人生とどこかで繋がり、作品を通して《共感》することができたら何が起こるのか。それを知りたくて絵を描いています。
例えばこの『Purpul Rain』(上記写真の左側作品)では、“自立へ至るプロセス”を題材にしています。自立は自分一人の力で存在することを意味しますが、そのプロセスは誰かの支えや教えがあって導かれるものなのではないかという考えから、それぞれが通る“自立へ至るプロセス”を尊重したくて描いた作品です。
ことしるべ:金などの装飾的な色遣いも印象的ですね。
満原:金属を使った表現は日本画独自の手法なので、そこから何か新しくて面白い表現ができないかと、金属箔や金属粉の可能性を模索しながら描きました。
下村 一真 氏(陶芸)
ことしるべ:他の3名の方の作品と違い、非常にシンプルな造形、色の作品が並んでいますね。
下村:自分にとっては、器のオレンジ色の部分にあたる「火色」が一番にあります。
「火色」が作品のテーマと言えます。そして、それを美しく見せるのが形です。そこは他の3名の作品とは違う点ですね。
ちなみに、これらの作品は薪の窯で焼いています。
ことしるべ:薪の窯は、電気やガス窯と違いコントロールが大変と聞きますが。
下村:はい。うまく窯をコントロールすると、いいオレンジ色が出てきます。
この火色がでるように、今使っている窯は自分で設計したくらいです。それくらいこの色にこだわっています。その火色とボディの白色とのコントラストの妙を狙っています。
とにかく、この色を見てほしいですね。
今回初めての試みとなった、この4人での展覧会。“ 個人的に絵画だけのグループ展が多かったので、陶芸作品と一緒に展示する展覧会がしたかった ”という発起人の蛭田氏。京都市立芸術大学の美術の同窓会名も偶然「象の会」とのことですが、“今までもこれからも「象(しょう)」が作品作りのテーマにあることには変わりはなく、このメンバーでの第2回展もいずれはぜひ開催したい”と4人の作家全員が口を揃えておっしゃっていました。
これからのさらなる活躍が期待される油画、日本画、陶芸の若手作家4人の競演をぜひお楽しみください。
●象をひらく
◆会 期 平成30年6月26日(火)~7月8日(日) 会期中無休
◆時 間 午前11時~午後7時(最終日は午後5時まで)
◆会 場 ポルタギャラリー華
〒600-8216 京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町902番地
JR京都駅徒歩5分 京都駅前地下街ポルタ内
http://www.porta.co.jp/shop/detail/153/563
◆料 金 無料
ポルタギャラリー華 外観
【お知らせ】
6月にポルタギャラリー華での展覧会「象をひらく」で紹介した下村一真氏の個展「青い心」が開催中です。
下村一真氏に見どころをお聞きしました。
” 2016年の初個展から2年半、ずっと薪窯で磁土を焼成し、釉薬や顔料を使うことなく自然に発色する美しい赤色、「火色」を追い求めて参りました。
本展では、「青い心」をテーマに制作したオブジェを一堂に展覧いたします。
「青い心」にはどのようなどのような想いが込められているか、ご高覧ご指導賜れれば幸いでございます。 "
■会 場 ギャラリー白3
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F
HP→ http://galleryhaku.com/
■会 期 2018年10月1日(月)~10月6日(土)
■時 間 午前11時~午後7時(最終日は午後5時まで)
■料 金 無料
【お知らせ】
6月にポルタギャラリー華での展覧会「象をひらく」で紹介した満原利奈氏と蛭田美保子氏が作品出品する展覧会「~次世代を担う作家たち4人展~ 栗田有佳・松元悠・満原利奈・蛭田美保子」が開催されます。
出品作家のひとり、満原利奈氏に見どころのコメントをいただきました。
” 今回の展示もまた、京都市立芸術大学を卒業した4人の若手作家による展示となっております。
日本画、油絵、版画、水彩画、ドローイングなど、多数のジャンルで展示させていただきます。
「象をひらく」にお越し下さった方も、そうでない方もお楽しみいただける展示になっているかと思いますので、お近くにお立ち寄りの際は是非お立ち寄り下さい。 ”
■会 場 京阪百貨店 守口店 6階 美術画廊
■会 期 8月30日(木)~9月5日(水)
■時 間 午前10時~午後7時(最終日は午後5時まで)
★9月2日(日)は出品作家4名全員が来場します! ※展覧会は終了しました