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大丸創業300周年記念鼎談「京都の文化といけばな」(展覧会は終了しました)

大丸創業300周年記念鼎談「京都の文化といけばな」(展覧会は終了しました)

いけばなの祭典「第68回 華道京展‐風・流 FU-RYU‐」が4月6日~11日、京都市下京区の大丸京都店6階の大丸ミュージアム京都で開かれる。いけばな発祥の地である京都で、1950(昭和25)年から続く華道京展。京都の主だった33流派から家元ら計231人が出瓶する。展示作品は前期、後期(各3日)で入れ替える。今年は大丸百貨店が京都・伏見で創業されてから300周年になるのを記念し、1階エントランスホールに日替わりで大型作品も特別展示される(鑑賞自由)。
主催する京都市の門川大作市長、京都いけばな協会の桑原仙溪会長(桑原専慶流家元)と大丸京都店の丹羽亨店長が同展やいけばな、京都の文化・芸術について語り合った。

―京都は「いけばな発祥の地」と言われます。なぜ京都でいけばなが生まれ、その魅力が衰えずに続いているのでしょうか?


門川大作・京都市長 京都の歴史は精神文化と物質文化が融合し、心と物が刺激を与え合って進化してきました。その背景に人々の絆や自然との共生や宗教的情操があります。いけばなも、お供えする供花が原点ではないかと思います。今、世界の人々が花を愛で、お茶を愛し、香りを楽しみますが、京都に生まれ日本で発展してきた、いけばなもお茶も香も哲学にまで進化させたのは京都です。「はんなり」という言葉は、そもそもは「花あり」です。花と人間の生き方、暮らしの美学と哲学を融合させ、花により人を育ててきた歴史や街づくりがあります。それを大丸さんが応援し続けてこられたのが、この華道京展でしょう。33もの流派が仲良く切磋琢磨し連携するのが、京都のすごさですね。

桑原仙溪・京都いけばな協会会長 日本文化をリードしてきたのが、なぜ京都だったかと考えると、三方山に囲まれて手の届く所に自然があること。さらに公家文化への憧れがいろんな文化を育む背景になった。風流を愛でる雅の心が京都の文化の象徴だろうと思います。そしてオリジナルな美を創り出そうとする強い気持ちを持つ人が多くいたこと。室町の足利将軍、利休、光悦、宗達らのように。近く映画「花戦さ」が公開されますが、新たな美を生み出そうとしていた時代の空気を感じられるのではと期待しています。いけばなは生きている自然と一緒に作る芸術、文化、美です。それらがすべての文化、芸術につながり、影響を与えてきたと思います。そんな京都に文化庁が移転します。

■丹羽亨・大丸京都店長 この華道京展は昭和25年にスタートし、大丸は昭和36年から関わり半世紀やらせて頂いています。大丸は今年で創業300周年。1717年、伏見で当時は小さな呉服商だったのですが、徐々にいろんなものを取り扱い百貨店となる中で「物」だけでなく「事」にも重きを置き、文化や芸術をお客様に提供しなければならないという使命が出てきた。京都はいけばな発祥の地であり、この華道京展をどうしてもやりたかったのだと思います。徐々に参加する流派を広げて頂いた。全国の百貨店で華道展はいろいろやられていますが、33流派もそろうのはなかなかないです。

■門川 絶対ないですね。日本の華道の最高峰じゃないですか。

■丹羽 33流派の方たちが切磋琢磨しお客様を楽しませて頂いている。これからも文化、芸術の中心地である京都において、大丸京都店はこういう事業に力を入れていきたい。文化庁が京都に来ることを考えると、一層力を入れなければならないと思います。
 

―いけばなの未来や可能性についてどうお考えですか?


■丹羽 寺社仏閣が京都ほど多い都市は、世界でも稀です。その信仰の中でお花が脈々と受け継がれてきた。いけばなは人に安らぎを与えます。京都は世界でも尊敬される街です。来店される外国の方が増えていますが、物だけでなく芸術や文化にも興味を持たれている。今後も京都の文化の良さを世界の方々に紹介できるよう、微力ながら貢献できればと思っています。

桑原 今年の正月から大丸京都店では、ダウン症の書家と画家による「共に生きる展」が開かれましたが、これからの時代は共に生きることが大事だと感じました。先日、染織家の志村ふくみさんが自然を尊ぶ気持ちと自然の恵みに感謝する心を育てる仕事していきたい、と言っておられました。まさに、いけばなもそうです。花を選び、器を選ぶ時に感じるのは、人と同じだということです。最初は苦手な人同士でも段々と気持ちが通じ合う。いけばなも回を重ねていると、花の方から心を開いてくれる。自然と心を通わせることを、人と心を通わせることにつないで頂きたいと思います。社会でいけばなを生かす場を、皆さんと一緒に作っていきたい。ドイツで花を生けていると、言葉の通じない人たちとも花を通じて心を通い合わせることができました。東北の被災地でも一緒に花を生けている中で打ち解けることができた。お花はそういう力があります。

門川 世界を見ると、争いや環境破壊など心を痛める問題があります。日本人が大事にしてきた心を再認識せねばと思います。自然を尊び自然に感謝する。人も自然と共に絆を大切に生きる。よく京都のお勧めの観光の場所は、と聞かれると、京都の街ではどこでも御地蔵さんがまつられていて、きれいな水と生花がお供えしてある、と言って紹介します。世界に宗教都市はたくさんありますが、街の至るところに御地蔵さんがまつられているような街は他にありませんね。日本の文化のすごさは暮らしの中、衣食住と地域社会の中にあります。ヨーロッパ文化は上流階級のものだったと言われている。明治維新の頃に日本の識字率は9割を超えていた。ヨーロッパは5割。日本は、暮らしの中に文化があり、字を教えた。花も教え、長屋の小さな家でも花を生ける場所が暮らしの中にあった。でも床の間がなくなったりして、花を生ける所がなくなってきた。家の中に花を生ける場所を復活させられないだろうか、と思っています。

―今回の華道京展は、大丸創業300周年を記念して特別展示もあるのですね。


丹羽 大丸は創業者の「先義後利」という言葉を社是としてスタートしました。その言葉の本質をもう一度見極めたいと思っています。顧客第一主義と社会的貢献の意味を噛みしめて、京都の方々に支持されて何とか300年やってきた。何か恩返し、貢献ができないかという思いがございます。大丸の300周年のテーマは「不易流行」です。芭蕉の俳諧の理念で、古い歴史の中にも新しさを取り入れていくという意味だと思うのですが、それはいけばなにも通じるものがあると思います。それをテーマに打ち出しながら、68回目の華道京展を華々しく開催するとともに、今後も京都のために頑張ってまいりたいと思います。

写真、上から
・門川大作氏(京都市長)
・3人による鼎談風景
・桑原仙渓氏(京都いけばな協会会長)
・丹羽亨氏(大丸京都店長)


<イベント概要>
「第68回 華道京展‐風・流 FU-RYU‐」

会期:平成29年4月6日(木)~4月11日(火)
【前期】4月6日(木)~8日(土)【後期】4月9日(日)~11日(火)
入場時間:午前10時~午後7時30分(午後8時閉場)
※4月8日(土)、11日(火)は午後5時30分閉場
会場:大丸ミュージアム京都(大丸京都店6階)
ホームページ:http://www.daimaru.co.jp/museum/kyoto/kyoto_kadou_68/index.html
入場料:800円 ※高校生以下無料
問い合わせ先:第68回華道京展運営委員会事務局 ℡075-213-1003