スペシャル座談会「京都のつくり手4人が語る 寬次郎さんのココが好き!」 Vol.2

スペシャル座談会「京都のつくり手4人が語る 寬次郎さんのココが好き!」 Vol.2

器用すぎる天才と民藝思想との出合い

清水 すごく器用な人で、一つの釉薬を突き詰めるだけでも一生かかりそうなのに、いろんなことが高い完成度でできてしまう。だけどできるからこそ、寬次郎さんは悩んだと思うんですよ。陶芸家は作為的になりがちな作品でどう自我を消すか、あるいは模倣から脱せるか、皆悩む。寬次郎さんも悩んだ結果、民藝の思想と混じりあっていったんだと思います。「民藝」は大正の終わりに柳宗悦が、当たり前にある日用の工芸品に美を見いだしてつくった言葉。寬次郎さんとよくセットで語られるけれど、作家・寬次郎と民藝は直接には結び付かない。でもその思想を、自分なりに寬次郎さんは取り込んだんでしょうね。
清水大介さん

SHOWKO 確かに寬次郎さんの作品に無名性はないですもんね。ただ根底に流れる思想にはのっとっている。焼き物は火に器をくべるので「自分だけでつくっている」感は薄く、民藝の考え方、自我的な力でなく生活の中の思想や祈り、「他力」に通じるものを感じます。

吉岡 だからでしょうか、作品には「どや感」がなく、作為的な感じもない。身体が無意識に動いて、最後は火が完成させるような。土も釉薬も火もうまくコントロールしているけれど、それが意識的じゃなくて。

日置美緒さん

日置 融合している感じですよね。素材の声を聴きながら見守っている気がします。河井寬次郎記念館を訪れたとき、神様が至る所に祭ってあるなあと思ったんです。私も漆をはじめ自然からいただくさまざまなものを使ってものづくりをしていますが、寬次郎さんはアニミズムというか自然の力を肌で感じて、地面からそのエネルギーを受け取り、焼物に写してきた方なんじゃないかなって。
 

 


出演者プロフィール

 清水 大介さん
  きよみず だいすけ/五代目清水六兵衞の曽孫として京都に生まれる。2011年生活に寄り添う器をコンセプトにした清水焼ブランド「トキノハ」立ち上げ。15年ショップ・カフェ・陶芸教室併設の「HOTOKI」を開く。19年料理人向けオーダーブランド「素-siro」開始。

 SHOWKOさん
  しょうこ/窯元「真葛焼」に生まれる。2005年陶板画作家として活動開始。「読む器」をコンセプトにしたプロダクトブランド「SIONE(シオネ)」を立ち上げ、陶板画制作、プロダクトデザイン、ブランディングや茶会などを通じ、現代に生きるもてなしの文化・時間を創造。

 日置 美緒さん
  へき みお/京都市立芸術大卒。アトリエひふみ主宰。国宝・重文の建築や仏像、祇園祭山鉾、古美術の修復、茶道具・陶磁器の金継を手掛け、漆芸品やオリジナルジュエリー「日文」を制作。欧州各地での展示や金継・漆ワークショップ、海外著名芸術家との舞台作品創作も行う。

 吉岡 更紗さん
  よしおか さらさ/アパレルデザイン会社勤務を経て、愛媛県の西予市野村シルク博物館にて養蚕、座繰り機での製糸、撚糸、染色、製織を学ぶ。2008年生家である「染司よしおか」に戻り、自然界に存在する植物で染色、織を中心に制作を行っている。