ロシアの子供たちとの交流~当代15代・樂吉左衞門さんギャラリートークより~

ロシアの子供たちとの交流~当代15代・樂吉左衞門さんギャラリートークより~

昨年から今年にかけて、京都・東京の国立近代美術館で、「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」を開催していただきました。長次郎の名碗が一同に並ぶ事は、今後私の生涯では実現できない展覧会であると感無量でした。しかし私にはひとつ心残りなことがありました。

それは、ロシアでの子どもたちとの交流を紹介できなかったことです。ロシアでは子どもたちと樂茶碗の絵を描く、またお茶碗を作るワークショップを開催しました。特にプーシキン美術館でのワークショップは大いに盛り上がり、大変興味深いものでした。そういった絵やお茶碗を一緒に展示したいという思いを、国際交流基金の協力のもと、このたび樂美術館で実現することができました。

 

プーシキン美術館での樂茶碗の絵を描くワークショップには70~80人ほどが参加しました。現在展覧会場にも展示しておりますが、とても個性的な絵が多く、描いた子どもが何に感動をしているのか、何を掴んでいるのか、が良くわかります。描く対象をきれいに写した絵ではなく、それぞれが捉えた印象を表現しています。例えば、釉薬の混じり合った様子を絵の具をにじませて表現したり、中には砂を混ぜている子どももいます。これは樂茶碗の触覚的な質感を表しているのでしょう。それぞれが感性豊かに感じとり、なるほどと思わせる作品ばかりです。

 

一方、お茶碗作りは、15人ほどが参加しました。下は6歳ぐらいの子どもが小さい手で熱心に作っていました。お茶碗の作り方やノウハウを知るのではなく、土と語らいながらものを作る喜びを感じとり、また実際にどのように使われるのかを伝えるため、実際に日本からお菓子と抹茶を持参し、一服振舞いました。子どもたちは口々に「美味しい」と言っていましたよ。濃茶を練ると中には「甘い!」という子もおりました。砂糖やチョコレートの甘さではなく、抹茶独特の甘みを感じとったのですね。

 

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