アート・展示
講演・フォーラム
学び・体験
滋賀ならでは!
開催まで29日

開催期間:2025年9月20日(土)~2025年11月16日(日)

おさんぽ展 −空也上人から谷口ジローまで−

おさんぽ展 −空也上人から谷口ジローまで−

日本で「散歩」という語が初めて使われたのは、鎌倉時代から南北朝時代の禅僧、虎関師錬の漢詩文集『濟北集』だと考えられています。「梅花」「春遊」と題した漢詩で、虎関師錬は、野辺をそぞろ歩きつつ春の訪れを感じる喜びを謳っています。伝馬遠《高士探梅図》(岡山県立美術館蔵、前期展示)に月夜に梅を探して歩く様子が、浦上玉堂《幽渓散歩図》(岡山県立美術館蔵、 後期展示)に山河の中を歩む様子が描かれるように、虎関師錬が謳ったそぞろ歩きは、絵画の中にも表されてきました。 明治時代以降、西洋に学んだ画家たちもまた、散歩を様々な方法でモチーフとしました。菊池契月《散策》(京都市美術館蔵、前期展示)が描くのは、新緑の森の中を2匹の犬を連れて歩く少女の姿。金島桂華の《画室の客》(京都市美術館蔵、後期展示)は、女性が犬の散歩の途中で画家を訪ねたひとときを表そうとした意欲作です。また、いつもの散歩の中でふと立ち止まったり、風景が違って見えたりする一瞬をとらえる作品も生まれました。小倉遊亀は《春日》(滋賀県立美術館蔵)で、散歩の途中に知り合いと話し込んでしまう穏やかな光景を、漫画家谷口ジローは《歩くひと》(一般財団法人パピエ蔵)で、自らが長年暮らした場所の風景を細やかに描いています。 一方、散歩に類する行為をたどると、そこここを歩くことでは散歩と似ていながら、散歩とは異なる歩行の歴史を見出すこともできます。虎関師錬より前の時代には、空也、一遍、一向俊聖といった僧侶が、人々の救済を祈って諸国を巡り、その姿はたとえば《空也上人立像》(滋賀・荘厳 寺蔵/滋賀県立琵琶湖文化館寄託)のような肖像として表されました。また西行は、武士の身分を捨てて僧侶となり諸国を行脚して、その感興を多くの和歌に残しています(《西行物語絵詞》(国/文化庁保管))。与謝蕪村《松尾芭蕉経行像》(逸翁美術館蔵)に描かれるのは、経行という、ただ歩くことに専念し一歩一歩をゆっくりと踏みしめ身心を整える、禅の修行の姿です。 「おさんぽ展」では、散歩や歩くことをめぐって生まれた、重要文化財2件を含む約70作品を、 一部展示替えをしながらご紹介します。

前期:9月20日(土)〜10月19日(日) 後期:10月21日(火)〜11月16日(日)

■散歩という身近なテーマで、 時代やジャンルを超え、様々な作品を紹介します。 
日常生活の一コマにある散歩。この展覧会では、時代もジャンルも様々な作品を、散歩という身近なテーマで紹介します。 作品に表された散歩の風景から、どんなところを散歩しているのだろうという興味や、これは散歩なのだろうかという疑問も湧き起こってくるかもしれません。そうした体験は、作品の世界をより親しいものにしてくれるでしょう。 様々な作品の間をそぞろ歩くように、「アートさんぽ」をお楽しみください。


菊池契月《散策》1934年 京都市美術館蔵

■地域で大切に守り伝えられてきた、 貴重な文化財も展示。
本展では、滋賀の地が守り伝えてきた文化財もご紹介します。たとえば重要文化財に指定されている《空也上人立像》は滋賀県近江八幡市の荘厳寺に、滋賀県指定有形文化財の《一向上人像》は米原市の蓮華寺に、《一遍上人像・六字名号》は長浜市の浄信寺に伝わっているものです。空也、一遍、一向は、人々に念仏を勧めて諸国を歩いた遊行の聖としてよく知られているでしょう。人々の救済のために諸国を巡り歩くというのは、本展がテーマとする散歩とは異なる歩行のあり方です。しかしそうした歩く僧侶たちの姿が、人々の信仰を集め、肖像という形で今日まで大切に伝えられてきたことを知っていただきたく、本展ではこれらも展示しました。


 重要文化財《空也上人立像》鎌倉時代 滋賀・荘厳寺蔵(滋賀県立琵琶湖文化館寄託) 

■『孤独のグルメ』の漫画家 谷口ジローの珠玉の名作『歩くひと』。 身近な場所への視線から生まれる穏やかな風景を原画で。
『孤独のグルメ』が幅広く親しまれる漫画家谷口ジロー。谷口は2000年代初めからフランスをはじめ海外でも高い評価を得てきました。その谷口ジローが描いた『歩くひと』は、自宅とアトリエのあった東京清瀬を舞台に、何気ない日常の中の出会いを細やかに描いています。『歩くひと』第3話「町に出かける」から、 住宅や畑が混在する風景の中を歩く様子を描いたカラー原画1点、第4話「木のぼり」の全8ページ分の原画8点に加え、谷口自身が撮影し作画の参考資料としたカラー写真を展示します。


谷口ジロー《『歩くひと』第3話「町に出かける」原画》1990年 一般財団法人パピエ蔵 ©PAPIER/Jiro Taniguchi

 ■重要文化財を含む74作品をお楽しみください。
展覧会では、26の所蔵者・所蔵機関から出品される、48作家の74作品を、一部展示替えを行いながら紹介します。たとえばかつて切手になったことでも人気の高い金島桂華《画室の客》は、後期のみの展示となります。重要文化財2作品、滋賀県指定有形文化財1作品、大阪市指定有形文化財2作品、そして、現在活躍中のアーティストの作品を含め、散歩や歩くことをめぐって生まれた、時代やジャンルも様々な選りすぐりの作品をお楽しみください。


 金島桂華《画室の客》1954年 京都市美術館蔵


 東郷青児《超現実派の散歩》1929年 SOMPO 美術館蔵 ©Sompo Museum of Art,25004

関 連 イ ベ ン ト

◆ギャラリートーク [事前申込不要/当日先着順/要観覧料] 
担当学芸員がみどころを解説します。
日時:9月27日(土)、10月11日(土)、10月25日(土)各日とも14:00~15:00 
場所:滋賀県立美術館 展示室3 
定員:各回とも20名程度 
※同日、当館ギャラリーで開催している「秩父宮記念スポーツ博物館 スポーツの造形展」のギャラリートーク(15:15~16:15)も開催します。 

◆ きままにおさんぽ会 [要事前申込/抽選] 
美術館の周りのびわこ文化公園内を、寄り道しながらのんびりお散歩します。 
日時:10月4日(土)10:00~12:00 小雨決行 
場所:びわこ文化公園(集合場所:滋賀県立美術館) 
講師:横田岳人氏(龍谷大学 先端理工学部 環境科学課程 准教授) 
定員:20名 

◆たいけんびじゅつかん [要事前申込/抽選/要参加費(保護者の方のみ要観覧料)] 
小・中学生とその保護者の方を対象に、本展の鑑賞とワークショップを組み合わせたイベントを開催します。 
日時:10月5日(日)、11月16日(日) 各日とも13:00~15:30 
場所:滋賀県立美術館 ワークショップルーム 
定員:15名 

◆スペシャルトーク&対話鑑賞(詳細は美術館Webサイトをご覧ください。) 
日時:10月中旬開催予定 
場所:滋賀県立美術館 展示室3 
定員:20名程度 

◆滋賀ダイハツアリーナ×滋賀県立美術館 地域連携講座(詳細は美術館Webサイトをご覧ください。) 
日時:11月5日(水)10:00~12:00 
場所:滋賀ダイハツアリーナ、びわこ文化公園、滋賀県立美術館 
定員:20名 

◆ビジネスパーソン向け夜の鑑賞プログラム(詳細は美術館Webサイトをご覧ください。) 
日時:10月17 日(金)、10月31日(金)、11月7日(金)
場所:滋賀県立美術館

◆いつでも楽しめるワークショップコーナー[事前申込不要/無料] 
展覧会の最後に、鑑賞者がいつでも参加できるワークショップコーナーを設けます。展覧会を通して感じたことをかたちにすることができます。
場所:展示室3前の廊下

開催期間2025年9月20日(土)~2025年11月16日(日)
時間9:30~17:00(入場は 16:30 まで)
休館日毎週月曜日(ただし祝日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
会場 滋賀県立美術館 展示室3
大津市瀬田南大萱町1740-1
ホームページhttps://www.shigamuseum.jp/exhibitions/9892/
料金一般 /1200円(1000円)
高校生・大学生/ 800円(600円)
小学生・中学生/ 600円(450円)
※( )内は 20 名以上の団体料金
※企画展のチケットで展示室1・2で同時開催している常設展も無料で観覧可
※未就学児は無料
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳をお持ちの方とその介護者は無料
お問い合わせ滋賀県立美術館
TEL / 077-543-2111(8:30~17:15)
FAX / 077-543-2170
E-MAIL / info@shigamuseum.jp
主催/後援など主 催:滋賀県立美術館、京都新聞
後 援:エフエム京都
備考—小さなお子さんがいる、障害があるなどの理由で来館を迷っている方へ
同館では、しーんと静かにする必要はなく、おしゃべりしながら過ごしていただけます。目が見えない、見えづらいなどの理由でサポートをご希望される場合や、そのほかご来館にあたっての不安をあらかじめお伝えいただいた際には、事前の情報提供や当日のサポートのご希望に、可能な範囲で対応します。