香りの器
～高砂コレクション～

〇異国の香り

紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトにまで遡ることができる香りの歴史。蒸留技術やアルコールによる精油の抽出など香水文化の発展とともに、容器のデザインも多様化しました。
 

［古代の土器・陶器・石製容器］

≪赤絵式把手付香油瓶≫ 前6世紀
 

［古代オリエントのガラス製容器］

≪長頸香油瓶≫ 1-3世紀

18世紀には、王族貴族が香水の主導的役割を果たしつつも、庶民の間でも香水を楽しむ習慣が普及し、陶磁器による優美な香水瓶が人気を博し、19世紀以降は、市民社会の成熟とともに香水文化は洗練の度合いを高め、香水瓶もボヘミアン・ガラスやアール・ヌーヴォー、アール・デコの作家たちによるガラス工芸の粋を集めた作品によって、華やかな世界を演出するようになります。そして、20世紀には香水メーカーが、売り出す香水にふさわしいデザインをラリックなどの作家に依頼するようになり、香水瓶の量産時代を迎えました。
 

［陶磁器製の小さな香水瓶］

≪マイセン 色絵香水瓶「恋人たち」≫ 19世紀
 

［ボヘミアン・ガラスの香水瓶］

≪被（き）せガラス水玉文香水瓶≫ 19世紀
 

［アール・ヌーヴォーとアール・デコの香水瓶］

≪ドーム兄弟　百合文香水瓶≫ 1900年頃
 

［ルネ・ラリック］

≪ルネ・ラリック 香水瓶「光に向かって（ウォルト社）」≫ 1926年

〇日本の香り

日本の香りの歴史は仏教が伝来した6世紀以降に始まり、独自の展開を見せていきます。平安時代には、香りを聞いて競い合う「薫物合せ（たきものあわせ）」など優雅な遊びへと発展し、室町時代には、香りは「香道」という芸術へと高められました。それとともに、香を焚き、聞くための道具作りが盛んとなり、江戸時代の大名道具などの漆工品を中心に、香道具のための逸品が次々と製作されました。

［香道具］

≪鶴蒔絵香枕≫ 江戸時代 18世紀

そして、明治時代になると工芸品製作は、近世以前の職人たちによる分業制から、個人作家が美術作品を制作するという、新しい概念へと変化し、一点ものの香炉や香合は、実用だけでなく、鑑賞品としても捉えられるようになりました。

［香炉］

≪七宝花鳥文香炉≫　明治時代

古今東西の「香りの器」をどうぞご堪能ください！