京都に生まれた北大路魯山人(1883-1959)は、はじめ書や篆刻(てんこく)の分野で活動し、30歳代終わりの1922(大正11)年に、生来の食に対する関心から「料理の着物」としての作陶に向かいます。
それは単なる食器づくりではありませんでした。彼は中世以来日本文化の核となっていた茶道を基軸とするわが国の伝統に触れ、一挙に陶芸の古典復興を代表する存在となりました。その活動はまさに<『美』を食す人>と形容できるものです。
かつて中国大陸や朝鮮半島からもたらされ、日本人によって守り伝えられたやきもの、そして日本で生み出された素朴な焼締めのやきものから鮮やかな色絵まで、長い年月をかけて積み重ねられてきたやきものの様々な美をすくい上げた魯山人の制作は、絶えず同時代の陶芸家たちを触発しました。
本展では、魯山人を中心に同時代の陶芸家たちの作品と、中国、朝鮮、日本陶磁など古典の名品も併せて展示し、現代陶芸の礎となった昭和時代を展望します。
備前焼は、釉薬を一切使わない”焼き締め”のやきものです。窯の中で生じた様々な景色は、古くから人々を魅了してきました。
本展では、桃山時代から茶陶として茶人に愛された古備前の名品に始まり、その継承と復興を果たし、新たな作風に挑む近代、現代の備前作家の作品までを一堂に展覧し、時代を超えた備前焼の魅力を紹介します。
8世紀半ば、短命のうちに幕を閉じた紫香楽宮と大仏の造像が企図された甲賀寺。
近年の紫香楽宮の発掘調査や木簡の分析・研究など、紫香楽宮に残された遺物や、その後この地で開花した神仏の多様な造形から、紫香楽宮が歴史に果たした役割と、近江の優れた仏教文化を紐解いていきます。
作陶に関わる人であれば、一度は訪れてみたい憧れの“聖地”信楽。
滋賀県立陶芸の森では1992年の開設以来、国際文化交流の拠点として、53カ国1200人余りのアーティストが創作活動を繰り広げてきました。その取り組みは広く国内外で認知されるとともに、産地信楽の動向と関わりながら、新たな〈やきもの〉文化の創造に大きく寄与しています。
陶芸の森ではこうした国際性豊かな実績を活かして、情報化とグローバル化の急速な進展に対応すべく、近年は海外のレジデンス機関との連携強化に努めています。とくに、国際的なネットワークを活用した、交換プログラムの導入は、時代を見据えた取り組みといえるでしょう。海外での制作経験と、交流の機会を求めるアーティストを支援しています。
異国での〈交流と実験〉で、作家たちは何に興味や関心をもち、どのような成果を得てきたのか。本展では、その取り組みを作品と彼らの言葉などを介して紹介。また、国内外の作家が信楽で制作した作品も交えつつ、現代の多様な“やきもの”を展望します。
江戸時代中期(18 世紀)に、京都で活躍した蒔絵師・永田友治。その作品は、尾形光琳風の意匠に倣い、独自の技法を用いて漆工芸史上にしっかりと足跡を残しています。
しかしその実像ははっきりせず、謎に包まれています。本展では、多くの友治作品を展観し、化学分析による研究成果も交えて知られざる謎の蒔絵師「永田友治」の魅力にせまります。
間もなく幕を閉じる平成――。
共同通信社が配信した、平成の国内外重大ニュースの中から「日本を笑顔にした出来事」にスポットを当てた報道写真展を開催いたします。
龍寶山(りゅうほうざん)大徳寺は、嘉暦元年(1326)大燈国師・宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)によって京都紫野に開かれた臨済禅の大本山です。その塔頭のひとつ龍光院は、黒田長政が父・黒田孝高(如水・官兵衛)の菩提を弔うため、江月宗玩(こうげつそうがん、1574-1643)を実質的な開祖として、慶長11年(1606)に建立されました。当時の龍光院は、高松宮好仁親王、小堀遠州、松花堂昭乗ら一流の文化人が集う寛永文化の発信地でした。爾来四百有余年その法燈を守り続け、江月和尚の教えを今に伝えています。
本展は龍光院の全面協力を得て、国宝「曜変天目」や「蜜庵咸傑墨蹟」、重要文化財「柿・栗図(伝牧谿筆)」、「油滴天目」など寺伝の名宝が初めて一挙公開されます。
また、通常龍光院で行われている学びの会や坐禅の会などが、展覧会の会期中に限りMIHO MUSEUMに場所を移して開催されます。
開創以来脈々と受け継がれてきた禅の法燈、大徳寺龍光院の歴史と今の姿に触れる千載一遇の機会となることでしょう。
春めく季節。わたしたちが花に最も親しみを感じる季節かもしれません。陶芸の森陶芸館で花いっぱいの展覧会を開催します。
花は、古来より世界各地のさまざまな芸術のジャンルにおいて表現されてきました。もちろん、やきものの世界でも例外ではありません。東洋陶磁においては華やかな花をさまざまに意匠化した吉祥(きっしょう)文様が器を彩り、人々は幸せな人生への願いを込めた花の陶磁器を好みました。
また日本では、明治時代に欧米から導入された最新技術や意匠(デザイン)を用いて、建築用タイルやインテリア用品などさまざまなものが陶磁器で制作されました。中でも最も好まれたのが、西洋と東洋の花を融合させた花のモチーフでした。
そして現代陶芸においても、花を表現の源とする作家はたくさん活躍しています。美しさ、儚さ、生命力、清々しさなど、花のイメージを自己の作品に重ね合わせ、それぞれの思いをもって創作をおこなっているのです。
本展では、「花」を入り口にして近世、近代、現代というさまざまな時代の陶芸表現の世界を探ります。
展示室いっぱいに咲き誇る花々をお楽しみください。
明治時代、日本美術の宣揚に努めたアーネスト・F・フェノロサやウィリアム・S・ビゲローは、園城寺(三井寺)北院の法明院を度々訪れていました。同寺には彼らの遺愛品をはじめ、池大雅や円山応挙などの障壁画が数多く残されています。本展では、法明院に伝わる絵画や彫刻、聖教、古文書などの宝物を展示します。
茶杓(ちゃしゃく)とは、茶器に入った抹茶をすくい、茶碗に入れるための茶道具の一種です。一見とてもシンプルな一片の匙にも関わらず、「茶杓は人なり」と称せられ、古くから大切に扱われてきました。
本展は、竹芸家・池田瓢阿(ひょうあ)氏の監修のもと、千利休や小堀遠州など近代茶杓の礎となった近世(安土桃山時代~江戸時代)の茶杓を通した交友も回顧しつつ、三井財閥を支えた益田鈍翁を中心に、東西の近代数奇者約30人が作った茶杓を展観します。
また、近代に活躍した上村松園などの女性のほか、谷崎潤一郎や川喜田半泥子など文化人・芸術家らによる茶杓もあわせて合計120余点を展示し、なぜ茶杓を作るのか、その魅力とは何かを探ります。あわせて、茶杓以外の自作道具やゆかりの蒐集(しゅうしゅう)品約80点も展観し、当時の数奇者の茶の湯の一端をご覧いただきます。
明治以降、新生日本の経済だけでなく、文化面においても新たな風を巻き起こした偉人たちの存在を、茶杓を通じてたどります。
1958年、多くの方々に大津市の観光を楽しんでいただくため、市内の有名観光社寺10社寺が連携して「湖信会」が設立され、本年は60年の節目になります。本展では、加盟社寺の名宝を中心に、湖都大津の神社仏閣に伝わる仏像や神像などの宝物を紹介します。
中世古窯以来の伝統を誇る陶郷・信楽。近代陶芸の巨匠として広く知られる富本憲吉や河井寬次郎。そして現代陶芸の開拓者として活躍した八木一夫や熊倉順吉。また、岡本太郎をはじめ絵画や彫刻の世界で活躍した作家たちも、信楽で作品制作に挑んできました。本展では、彼らの足跡をたどりながら、信楽のやきものの魅力を探ります。
紀元15世紀、旧大陸の人びとが新大陸を発見した時、すでにそこは一万数千年に及ぶ人びとの営みがありました。本展では、アメリカ大陸最古の文明といわれるオルメカ文明を中心に、マヤ文明、アステカ文明など3千年に亘る作品を通して、自然や宇宙の神秘に寄り添ってきたアメリカ古代文明を紐解いていきます。
夏休みスペシャル企画として子ども連れでも楽しんでほしい、大人も童心に帰って美術品と親しんでほしいという願いを込めた体験型展覧会です。世界の古代美術、日本の中世、近世の美術を子どもが大好きな2つの色「赤」と「青」に分けて展示します。古くから呪術などに使われていた「赤」、鉱石の入手が難しく憧れの色だった「青」。どちらも信仰と結びつき、聖なる色とされてきました。人びとが色を手に入れ、美術品に色づけを施した歴史を探っていきます。
世界の村々でつくられているやきものは、自然の中の精霊や祖霊、あがめられる動物をうつわの模様や造形に表現し、その土地の素材である粘土や独特の手法によって制作され、その国や場所によってさまざまな姿を見せています。本展覧会では、1990年代の現地調査を経て収集したアジア、オセアニア、中南米などの世界各地の形象土器の数々を展観します。
戦後、前衛的な陶芸のパイオニアのひとりとして果敢に新しい時代の陶芸を探求した熊倉順吉。本展覧会では、彼の初期の作品やジャズから時代のほとばしりを映し出した陶芸作品、クラフト・デザイン運動の盛り上がりの中、産地信楽から多くの刺激を受けた熊倉順吉の器を紹介します。さらに信楽に滞在し、熊倉の熱い精神に触れた8人の21世紀の陶芸を担う作家たちの作品も併せて展観します。
「猿楽」とは、能と狂言で構成される現在の能楽の古称です。本展覧会は、平安時代後期、鎌倉時代の古面に始まり、南北朝から室町、安土桃山時代の大成期にわたる350面(うち重要文化財80面)の「面(おもて)」を通して、中世の人々が熱狂した「猿楽」の世界を、主に彫刻史の観点から、文化芸能史、文学史の側面もからめながら、ひもといていきます。(会期中展示替えあり)
2017年、本多康俊が膳所に入封してから400年の節目を迎えました。本展では膳所城と城下町の構造、藩校などにみる教育、領内農民の生活、膳所焼に代表される文化、幕末動乱の中で発生した膳所十一烈士事件など、歴史の表舞台に登場した膳所藩の歩みを、地元に残された資料を中心に紹介します。
本年は、大津遷都から1350年の節目の年になります。これを記念し、本展では大津宮関連資料や、大津の古代寺院の出土資料などを展示します。また、白鳳時代~奈良時代をはじめとして、7世紀に造られたさまざまな仏像や瓦を展示し、大津に都があった頃の華やかな仏教文化について紹介します。
MIHO MUSEUMの開館20周年と、同館設計者であるI.M.ペイ氏の満100歳を寿ぐ意味を込めた記念展です。北館では日本古美術を中心に、南館では世界のさまざまな地域、文明から選りすぐった古代美術を紹介します。「聖なるもの」「美しきもの」を求めて形成されたMIHOコレクションの精粋をお楽しみください。