京都を中心とした現代陶芸界は、世界的にみても作家の層が厚く、田嶋悦子は1980年代に関西のエネルギー溢れる自由な気風のなかで、女性の立場からの彩色豊かな官能的な作品を発表し注目を集めました。
1990年代からは、ガラスと陶を組み合わせた作風へと変貌をとげ、現代陶芸の領域を広げてミックストメディアの作品を制作しています。田嶋悦子は陶にはないガラスの透光性や質感に惹かれて、陶との組み合わせによる表現の効果を発揮させています。
作品のモチーフは花を基調とした植物的な形態であり、陶とガラスの素材感が違和感なく調和し、陶土の重量感はなく、拡張する作品空間が軽やかな雰囲気を漂わせています。
本展では、今回新たに制作された、鍵善良房の菓子詰合せ『園の賑い』をイメージした作品を中心に、1980年代から現在までの作品を展覧いたします。透過する光と作品表面の表情による、蠱惑的な世界を是非ご堪能ください。 出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館名誉館長)